はじめに|S&P500の弱い月を知れば、投資で勝てるのか
10月13日の両学長ライブでは、「S&P500の最弱は何月なのか」「株式市場の季節性を投資にどう活かすか」という話題と、「自分はもっと稼ぐべきなのか、それともお金を使うべきなのかを、どうすれば判断できるのか」という話題がタイトルに掲げられました。
投資を続けていると、相場に関する興味深い法則を耳にします。「秋は株が下がりやすい」「年末には上昇しやすい」「特定の月に買えば得をする」といった話です。知識としては面白い一方、数字を知っただけで売買を変えてしまうと、思わぬリスクを引き受けることになります。
また、収入が増え、資産が積み上がってきた人にとっては、毎月どれだけ投資へ回し、どの程度を自分の暮らしに使うかという問題も重要になります。
今回の2つのテーマは、表面的には投資データと家計の話です。しかし共通するのは「何となく不安だから行動するのではなく、目的・時間軸・数字を把握して判断する」という姿勢です。
この記事は、動画のタイトルで確認できる論点を中心に、S&P500の指数提供者、金融機関の季節性調査、金融庁、金融経済教育推進機構などの公開資料を照合した解説です。執筆時点でYouTubeの日本語字幕・自動字幕は取得できていないため、ライブの個々の発言や具体的な回答を逐語的に再現した記事ではありません。以下の判断手順や具体例は読者の実践用に編集したものです。
今日の結論|季節性は知識、稼ぐ・使うは生活の数字で判断する
結論を先にまとめます。
S&P500の長期的な月別データでは、9月が歴史的に弱い月として知られています。これは統計的な傾向であり、9月に毎年下落することを意味しません。9月に売って別の月に買い直す投資戦略が、継続的に勝つと保証するものでもありません。
長期の資産形成で重要なのは、短期の月別の値動きを予想することより、投資できる期間、リスク許容度、積立を続けられる家計、商品にかかるコストを確認することです。
一方、「もっと稼ぐか、使うか」という問いは、全員に共通する正解がありません。
生活費や負債返済で毎月の余裕が不足している場合と、十分な貯蓄がありながらお金を使うことに抵抗を感じている場合では、次の一歩が変わるからです。
まず生活に必要なお金を守り、家計の余力を確かめたうえで、収入を増やす取り組みと、自分にとって価値のある支出のどちらが今必要かを選ぶことが大切です。
S&P500とは?「500社に均等に投資する指数」ではない
S&P500は米国株式市場の主要な大型株500社で構成される代表的な株価指数です。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによれば、米国の大型株市場を広く示す指標として利用されています。
ただし、500銘柄へ同じ金額を投資する指数ではありません。
基本的に浮動株調整後の時価総額に基づいて構成比率が決まるため、時価総額の大きい企業ほど指数への影響が大きくなります。
巨大なテクノロジー企業などが大幅に上昇すると指数全体を押し上げることがあり、反対に一部の大型株が下がると他の企業が堅調でも指数が弱くなる場合があります。
S&P500連動型の投資信託を持っている人は、「米国の大型株に幅広く投資できる」という利点と、「米国株式市場や大型株の値動きが中心となる」という特徴を両方理解しておきましょう。
また、日本円で評価する投資信託の場合、米ドル建ての株価の変動に加えて、円とドルの為替相場も円換算の損益へ影響します。
そのため、米国でS&P500が上昇した月でも、日本の投資家が円ベースで同じ割合の利益を得るとは限りません。
S&P500で歴史的に最も弱い月は9月
今回の動画タイトルにある「最弱は〇月」という問いを、長期の月別平均リターンという意味で考えると、広く知られている答えは9月です。
ウェルズ・ファーゴの2026年9月の市場解説では、1928年以降のS&P500について、9月は下落した年が約55%、平均月次リターンが約マイナス1.1%だったと紹介されています。
また、J.P.モルガン・ウェルス・マネジメントの2026年8月の解説でも、1945年以降の平均では9月が最も弱いと整理されています。ただし、対象期間が違えば平均値は変わります。
ここで押さえておきたいのは、こうした数字は過去の観測データをまとめたものであって、これからの9月の予測値ではないということです。
仮に過去の100年程度で9月の平均がマイナスだったとしても、ある年の9月にプラスになることは十分あります。
平均値だけでなく、上昇した年の割合、下落した年の割合、大きく暴落した年が平均を引き下げていないか、といった数字も見なければ、実態を捉えにくくなります。
「9月は最弱」=「9月は絶対に売る」ではない
歴史的に弱い月だという情報を聞くと、8月の終わりに売却し、9月の終わりに買い直せばよいと考えるかもしれません。
しかし、この方法には難しさがあります。
第一に、9月でも上昇する年があります。事前に売った後、株価が上昇すればその利益を逃してしまいます。
第二に、9月の前後で株価がどう動くかは分かりません。9月に買い直すつもりが、8月後半や10月初めの大きな上昇を取り逃す可能性があります。
第三に、実際の売買には商品によってコスト、為替変動、税金などが絡みます。NISA口座で保有している場合も、売却と再購入を頻繁に繰り返すことが、自分の長期投資方針に適切か検討する必要があります。
つまり、季節性の数字を知っていることと、季節性だけで売買することで利益を得られることは別です。
なぜ9月は弱いと言われるのか
9月の弱さを説明する説はいくつかあります。
夏休みの時期が終わり、機関投資家がポートフォリオを見直すこと、秋以降の金融政策・企業業績への見方が変化すること、流動性や資金の動きなどが挙げられることがあります。
ただし、J.P.モルガンの解説も、9月効果について単一の原因が証明されているわけではないとしています。
「過去に繰り返し観察された現象」と、「その原因が確定していて、今後も再現できる現象」は区別する必要があります。
相場はインフレ、金利、景気、企業利益、政治情勢、投資家心理など、多くの条件の影響を受けます。
月というカレンダー上の区切りだけを使って、次の値動きを高い精度で当てられるわけではありません。
市場の季節性を調べるときは、統計の対象期間、価格指数か配当込み指数か、米ドル建てか円建てかなど、元データの違いにも注意しましょう。
「季節性を投資に活かす」とは、売買日を当てることだけではない
季節性を活かすという言葉を、短期売買の技術と考える必要はありません。
むしろ長期投資を続ける人にとっては、秋に株価が下がっても慌てないよう、値下がりが起こり得ることを事前に理解する材料になります。
定期積立を維持するための心構え
一定額を定期的に投資する方法では、株価が高い時期は購入数量が少なくなり、安い時期は多くなります。
米国証券取引委員会のInvestor.govでも、定額で定期的に買う方法をドルコスト平均法として説明しています。
もちろん、それによって損失がなくなるわけでも、一括投資より必ず高い利益を得られるわけでもありません。
それでも、毎月の値動きで方針を変えず、家計の黒字の範囲で積立を続ける仕組みは、初心者にも理解しやすい方法です。
値下がりに備えた現金を確保する
株価が下がったタイミングで困るのは、投資資金とは別に必要な生活費まで株式へ回している場合です。
急な病気、仕事の減少、家電の故障、住居の修繕費などが重なると、価格が低いときに株式を売らざるを得なくなるかもしれません。
数年以内に使う予定のお金や、急な出費への備えは、投資商品とは分けて管理する考え方が重要です。
リバランスとリスク許容度を見直す
米国株式が値上がりし、保有資産の大部分を占めるようになっていたら、季節性に関係なく自分の資産配分を確認する価値があります。
株式が大きく値下がりしたとき、生活や気持ちの面で耐えられるか。今後数年で大きな支出はないか。
こうした点を確認し、必要なら資産配分の見直しを検討することが、カレンダー上の「最弱月」を狙うより実用的な場合があります。
「9月に積立を止めた方がよい?」への考え方
よくある疑問が、「歴史的に9月が弱いなら、9月だけ積立を休んだ方がよいのでは」というものです。
結論として、季節性の情報だけでは判断できません。
もし積立停止を検討する理由が、生活費の不足、収入減、近い将来の支出なら、家計を守るために積立額を減らしたり一時停止したりする判断は合理的な場合があります。
一方、「9月は下がるはず」という予想だけで積立を止めるなら、9月に値上がりした場合はその期間の購入機会を逃します。
定期積立では、毎月の投資判断を減らして継続しやすくすることも利点です。
投資方針を変えるなら、相場の月別統計より先に、投資の目的とお金を使う時期が変わったかを確認するのが基本です。
後半のテーマ|「もっと稼ぐべきか、使うべきか」をどう知る?
続いて、生活に近いもう一つのテーマです。
「もっと稼ぐべきなのか」「お金を使うべきなのか」は、収入額だけでは判断できません。
年収が高くても、毎月の固定費や借入返済が重ければ余裕が少ない人もいます。反対に、収入が平均より低くても、支出を抑え、十分な備えがあり、時間や健康を大切にして暮らしている人もいます。
そこで重要なのは、他人の収入と比べることではなく、自分の生活を数字で見て、何が不足しているのかを整理することです。
金融庁の資産形成に関する案内でも、家計管理の基本として収入と支出を把握し、収支を黒字にすることが挙げられています。
判断の第一歩は「毎月の余力」を計算すること
まず手取り収入、生活に必要な支出、負債返済、積立、特別費の月割額を把握します。
たとえば手取り月20万円で、生活費と各種返済に19万5,000円を使っている場合、毎月自由に使えるお金は5,000円しかありません。
一方、手取り20万円で生活費と必要な支出が14万円なら、6万円の余力があります。
同じ収入額でも、取れる行動が変わります。
家計で注意したいのは、年間の税金、保険更新、車検、旅行、家電購入などが毎月の収支には表れにくいことです。
年に12万円の特別費が見込まれるなら、毎月1万円を別に確保して考える方法があります。
家計が黒字でも、実際にはカードの分割払いや借入残高が増えているなら、見かけだけの黒字になっていないか確認しましょう。
不足しているのは「収入」なのか「使い方」なのか
必要な生活費を賄えず、固定費の見直しだけでは解決しないなら、収入を増やす方法を考える必要があります。
転職、副業、スキルアップ、今の仕事の単価交渉、働き方の改善などが候補になります。
一方、収入は十分あるのに、高額な保険、使っていないサブスク、不要なローンなどが支出を押し上げているなら、まず固定費を見直す方が効果的かもしれません。
また、収入が増えても、その分生活水準が上がってしまえば、資産が増えるとは限りません。
単純に「高収入を目指すべき」と決めるより、何が家計のボトルネックになっているかを見る方が判断しやすくなります。
「もっと稼ぐ」ことを優先した方がよい状況
収入増を検討する価値が高いのは、基本的な生活費を払ったあとに余裕がほとんど残らない場合です。
また、収入源が一つしかなく、失業や取引先の減少で生活が立ち行かなくなる不安が大きい場合も、収入源を増やす方法を考える意味があります。
ただし、稼ぐための行動には、時間、健康面の負担、学習費用、事業上のリスクが伴います。
たとえば副業を始める場合、「月3万円増えそう」という売上目標だけでは不十分です。
材料費、ツール代、手数料、通信費、税金、作業時間などを差し引いて、どれだけ手元に残るか確認します。
さらに、長時間労働で体調を崩すようなら、収入増だけで良い結果とは言えません。
収入アップは小さく試してから広げる
新しいスキルを身につけたり、副業を始めたりする場合、最初から高額な講座や設備へお金をかける必要はありません。
まず市場で求められている仕事を調べ、小さな案件を試し、実際に報酬を得るまでの流れを確認します。
そのうえで足りない知識やツールが明確になったら、必要なものへ投資する順序が安全です。
「稼ぐ力を高めたい」という気持ちと、「いま高額な投資をすれば稼げる」という勧誘は分けて考えます。
「お金を使う」ことを優先した方がよい状況
一方、家計が継続的に黒字で、緊急時の現金や近い将来の必要資金を確保し、将来の積立も無理なくできているなら、今の暮らしにお金を使うことを検討してもよいでしょう。
お金は数字を増やすためだけのものではありません。
家族や友人と過ごす時間、健康や安全に配慮した生活、学び、旅行、住環境の改善など、本人が価値を感じることに使う役割もあります。
ただし、「使う力」とは欲しいものを無制限に買うことではありません。
大切なのは、後から振り返って納得できる支出を増やすことです。
同じ金額でも満足度は違う
同じ1万円であっても、使わない物を衝動買いするのと、長年会えていなかった人に会いに行く交通費にするのとでは、本人にとっての価値が違う場合があります。
何がよい支出かは、人によって変わります。
他人が「これは浪費だ」と言ったものでも、本人にとって生活の大切な楽しみになっていることがあります。
逆に、SNSで流行している商品でも、本人に必要がなければ買う理由はありません。
「使う金額の大きさ」より「その支出が自分の目的と合っているか」で判断することが基本です。
どちらを優先するか迷ったときの4つの質問
最初の質問は、「いまの収入で生活費と返済を安定して賄えているか」です。
答えが「いいえ」なら、収支改善が先です。固定費の見直しと収入増を検討し、必要に応じて支出の優先順位を付けます。
二つ目は、「急な支出に対応できる現金を持っているか」です。
十分でなければ、まず備えを増やす方が落ち着いて判断しやすくなります。必要な額は収入の安定性や家族構成によって異なります。
三つ目は、「今後数年で使う予定のお金を確保できているか」です。
引っ越し、進学、住宅設備の交換、医療費、事業投資など、使い道が決まっているお金は、長期の投資資金と分けて考えます。
四つ目は、「本当は叶えたいことがあるのに、お金が減る不安だけで見送っていないか」です。
家計が安定しているのに、何年も大切な希望を先延ばししているなら、適切な予算を設けて使うことにも意味があります。
この四つへの回答を整理すると、「今月は収入改善」「今月は支出の見直し」「今月は楽しみの予算を設ける」といった具体的な行動につなげやすくなります。
例:月2万円の余裕が増えたらどうする?
たとえば固定費を見直した結果、毎月2万円の余裕が生まれたとします。
この2万円の使い道は、一つに決める必要がありません。
生活防衛資金が不足していれば、その補充に回すことが考えられます。
高い金利の借入があるなら、返済を優先した方が家計全体の負担が減る場合があります。
当面の資金に問題がなく、長期の資産形成を進めたいなら、無理のない範囲で積立額を増やすことも選択肢です。
一方、備えや資産形成が十分進んでいて、今の暮らしへ価値のある支出をしたいなら、2万円の一部を「使う予算」にする方法もあります。
大切なのは、何となくすべてを投資することでも、何となくすべて使うことでもなく、家計状況に合う優先順位を選ぶことです。
稼ぐ時間と、使う時間も有限
もう一つ、数字だけでは見落としやすいのが時間です。
追加収入を得るために毎週何時間も働けば、家族と過ごす時間や睡眠、休息に使える時間は減ります。
仕事が好きで、その活動自体にやりがいを感じているなら問題ない場合もあります。
しかし、目的を考えないまま働き続けると、収入は増えても疲労やストレスが大きくなる可能性があります。
「もっと稼ぐ」という決断は、増える金額だけでなく、そのために使う時間や体力を含めて判断する必要があります。
逆に、時間を節約する家電や家事サービスなどへ支出することで、仕事・休息・学習の時間を増やせる場合もあります。
稼ぐ力と使う力は対立するものではなく、互いに生活を助ける関係にあります。
今週やっておきたい家計と投資のチェック
今日のテーマを実生活に落とし込むために、次の行動を検討してみましょう。
- 直近3か月の手取り収入と生活費を確認する
- 固定費と借入返済を一覧にする
- 年間の特別費を月割りで見積もる
- 緊急時の現金を別に確保できているか確認する
- 今の積立額が無理なく続くかを確かめる
- 投資商品を選んだ理由を一文で書いてみる
- 相場の季節性だけで売買を変えようとしていないか確認する
- 次の3か月で自分にとって価値のある支出を一つ考える
- 収入を増やしたいなら、小さく試せる行動を一つ決める
一度にすべてを変える必要はありません。
まず自分がどの状態にいるかを把握するだけでも、相場ニュースや他人の収入に振り回されにくくなります。
確認済みQ&A
Q1. S&P500が歴史的に最も弱い月は何月ですか
長期の月別平均騰落率を見ると、一般に9月が弱い月として知られています。
ただし、集計期間や指数の条件で具体的な数値は変わります。また、9月に必ず下がるわけではありません。
平均値だけでなく、上昇年と下落年の割合を確認することが重要です。
Q2. 9月に株を売って10月に買い直す方が有利ですか
季節性だけでその方法が有利だとは判断できません。
9月に上昇する年もあり、売却と再購入の間の値動き、コスト、税制などの影響があります。
長期の積立をしている場合は、短期の月別傾向より、運用期間と家計状況に沿った方針を優先して考えましょう。
Q3. 収入が少ない人は「使う力」より「稼ぐ力」を優先すべきですか
収入額だけでは決められません。
生活に必要な支出と返済を賄えておらず、固定費の見直しだけでは改善できない場合は、収入増の検討が重要になります。
ただし、収入を増やすための時間や健康への影響も考慮します。
Q4. お金が減るのが怖くて、楽しみのために使えません
まず必要な生活費、緊急時の備え、将来の支出、積立額を確認します。
そのうえで家計に余裕があるなら、あらかじめ「楽しむための予算」を設ける方法があります。
使うことへの不安を無理に消そうとするより、金額と目的を決めて納得できる支出を積み重ねることが現実的です。
まとめ|月別の相場より、自分の生活設計が先
今日のテーマを振り返ると、S&P500の季節性は知っておいて損のない投資知識です。
歴史的に9月の平均が弱いという事実はあります。しかし、それだけで未来の売買タイミングは決められません。
インデックス投資では、時間軸、積立を続ける家計の余力、現金の備え、リスク許容度、商品コストといった基本を押さえることが大切です。
そして「もっと稼ぐか、使うか」は、現在の収支と資産状況、将来の計画、自分にとっての時間や経験の価値を確認して決めることができます。
お金を増やすことだけが目標ではありません。
必要なところでは稼ぐ。守るべきところは守る。将来のために積み立てる。そして、今だからこそ価値があるものには使う。
そのバランスを自分の暮らしに合わせて調整することが、長く続く資産形成につながります。