結論:本当に返す借金なら元本が即贈与とは限らないが、無利息の利益は別問題

住宅ローンの金利が上がることを心配した親から「2,000万円を無利子で貸す。毎月10万円ずつ返してほしい」と提案された場合、税務上どのような注意が必要でしょうか。

国税庁のタックスアンサー「親から金銭を借りた場合」では、親子などの特別な関係にある人でも、返済能力・返済状況などから真の金銭貸借と認められるなら、借入金の元本そのものは贈与にならないと説明されています。一方、利息を付けないことによって生じる利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります。

つまり「親から無利子で借りることは常に脱税」というわけでも、「借用書を書けば税金が絶対にかからない」というわけでもありません。約束どおり返せる計画と、実際に返している客観的な記録が重要です。金額が大きいため、契約前に税理士へ個別相談することをおすすめします。

2,000万円を毎月10万円ずつ返すと何年かかる?

無利息で毎月10万円ずつ返済し、ボーナス返済がないという例では、2,000万円÷10万円=200か月です。これは16年8か月に相当します。したがって契約書には、貸付日・返済開始日・返済期限・各月の支払期日などを具体的に記載する必要があります。

仮定の条件金額・期間
親からの借入額20,000,000円
毎月の返済額100,000円
年間返済額1,200,000円
完済までの回数200回
返済期間16年8か月
親が貸す金銭の利息0円(本例)

これは利息がないことを前提にした単純計算です。実際には親の年齢、親自身の生活費、本人の収入、住宅ローンの残高、返済開始時期、万が一の病気や失業の可能性を確認し、無理のない返済計画であるか判断しなければなりません。

返済期間の長さも重要です。例えば親が高齢であれば、完済前に親が亡くなり貸付債権が相続財産となる可能性があります。「親が亡くなったら返済不要」と最初から考えると、契約が実質的な贈与なのではないかという問題も生じ得ます。

親子間の貸付でも贈与と判断されるケース

国税庁の説明では、返済の予定が具体的でなかったり、「ある時払い」「出世払い」など実際に返済することを前提としない契約だったりする場合、借入金そのものが贈与として扱われる可能性があります。

たとえば、2,000万円を受け取ったものの、何年間も返済をしておらず、催促もなく、本人に十分な返済能力がない場合、形式上の借用書だけで実質的な金銭貸借と説明できるとは限りません。

反対に、貸付時に借用書を交わし、銀行振込で定期的に返済し、残高を確認している場合は、実際に返済している事実を示す資料になります。ただし、それだけで税務署が必ず貸借と判断すると保証するものではありません。契約と行動が一致していることが重要です。

準備する書類の例

親子で金銭消費貸借契約書を作成する場合は、貸主・借主、金額、貸付日、利率、返済開始日、返済方法、毎月の返済日、最終返済期限、遅れた場合の取扱いなどを記載することが考えられます。

お金を動かすときは、親の口座から借主の口座へ振込み、入金記録を保管します。その後の返済も口座間で行い、通帳や明細を残します。現金の手渡ししか記録がない場合より、銀行振込の履歴がある方が返済の実態を説明しやすくなります。

書類の保存場所を家族にもわかる形にすることは有用ですが、口座番号などの個人情報を共有フォルダに無防備に置くことは避けましょう。契約内容を途中で変更した場合は、変更した事情と合意内容も記録してください。

利息ゼロだと贈与税がかかるの?

ここは元の質問で特に誤解しやすい点です。国税庁は、親子間の無利息の貸付について、利子に相当する金額の利益が贈与として扱われる場合があると明示しています。

例えば市場で一般的に借りる場合の金利を年1%と仮定し、2,000万円の借入残高が1年間ずっと変わらなかったとする極めて単純な試算では、利息相当額は年20万円です。しかし、この1%は制度が定める一律の贈与税計算率ではありません。実際の適正利率や利益額の判定、各年の残高、取引実態などによって扱いは変わります。

また暦年課税の110万円の基礎控除があるからといって、「親子間の無利息分は絶対に課税されない」と判断することはできません。本人が他の贈与を受けている場合や、貸付そのものが実質的な贈与と判断された場合、結論が変わります。

税理士へ相談するときは、元本、借入目的、親の年齢、貸付時の合意内容、本人の返済能力、他の贈与、想定される利息相当額をまとめて伝えましょう。金額が大きい契約ほど、後から慌てて説明するより事前確認が重要です。

銀行の住宅ローンを返す前に確認すること

親からの資金で銀行の住宅ローンを繰上返済する場合、単に銀行へ払う利息が減るかどうかだけでは比較できません。住宅ローン控除・団体信用生命保険(団信)・手元の現金・借入条件なども変わる可能性があります。

比較項目銀行ローンを続ける親の貸付金で銀行ローンを完済する
借入金利契約に従う利息を払う親との契約に従う(無利息なら0円)
住宅ローン控除要件を満たすなら残高に応じて適用銀行ローンが消えた後は適用条件が変わる
団体信用生命保険契約条件に従い保障が続く完済すると通常は銀行借入に付随する保障が終了
返済先銀行親(後に貸付債権が相続される場合も)
税務上の問題一般の銀行借入親族間の金銭貸借・無利息利益・相続が関係する

国税庁は、親族や知人からの借入金は住宅ローン控除の対象となる住宅借入金には該当しないと明記しています。銀行の借入金をすべて完済し、親からの借入金だけになった場合、親への返済額を銀行ローンの年末残高と同じように控除対象にすることはできません。

団信についても、銀行の住宅ローンに付帯していた保障が完済に伴い終わる場合があります。本人の死亡・所定の高度障害などの際の保障が家計でどのような意味を持つかを確認し、金利だけで判断しないようにしましょう。

住宅ローン控除を受けていない場合は?

すでに控除期間が終わっている場合や、もともと要件に該当しない場合もあります。その場合でも団信、返済手数料、返済後の手元資金、親の生活資金への影響は残ります。

銀行の住宅ローンを部分的に残すか、一部繰上返済にするか、親から借りる金額を少なくするかなど複数の案を比較しましょう。ただし、それぞれ銀行と税務上の手続きが異なる可能性があるため、契約前に確認してください。

親にもしものことがあった場合

親から借りたお金は、返済中に親が亡くなったからといって、自動的に返済義務が消えるわけではありません。親が持っていた貸付債権は相続財産として扱われる可能性があります。相続人が複数いる場合は、返済先や遺産分割への影響を検討する必要があります。

「親から借りたことは兄弟に言っていない」という状態は、将来家族間のトラブルにつながりやすくなります。相続を含む契約関係は、必要に応じて司法書士、弁護士、税理士に確認し、当事者が説明可能な書類を残しましょう。

親の資金も一度貸し付けると、急な介護費用や医療費にすぐ使えない可能性があります。親自身の生活防衛資金、老後の生活設計、突発的な支出を確保したうえで金銭の貸借を検討してください。

契約前の計算と相談の順番

まず、現在の銀行ローンの残高、金利、返済期間、住宅ローン控除の残期間、団信の保障内容、繰上返済の手数料を一覧にします。次に、親の貸付提案を受けた場合の毎月の返済額、期間、親の生活資金への影響を整理します。

続いて、税理士へ契約内容と無利息の利益、贈与税の考え方を相談します。必要に応じて金融機関へ繰上返済や団信の扱いを確認し、司法書士・弁護士に契約と相続上の問題を相談するとよいでしょう。

比較の目的は税金の抜け道を探すことではありません。親子双方が納得できる返済を継続し、将来の争いが起きにくい形にすることです。

よくある質問

親から2,000万円を借りるだけで贈与税がかかりますか?

返済能力と返済実績などから実際の金銭貸借と認められる場合、借入元本そのものは贈与にはなりません。ただし無利息の利益が贈与と扱われる場合があります。

借用書があれば絶対に贈与税を防げますか?

防げるとは限りません。実際の返済や契約内容を含め、金銭貸借の実態で判断されます。

毎月10万円なら完済まで何年かかりますか?

2,000万円を無利息で毎月10万円返す場合は200か月、16年8か月です。返済開始月などによって最後の返済月は変わります。

110万円の基礎控除があるから無利息でも問題ないですか?

一律には言えません。利息相当額の判定や他の贈与の有無、貸付そのものの実態によって扱いが異なります。

親から借りた分は住宅ローン控除の対象ですか?

国税庁の説明では、親族や知人からの借入金は住宅ローン控除の対象となる住宅借入金には該当しません。

参考資料(2026年10月26日確認)

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2026年10月26日の会員向けQ&A・Q8をもとに、国税庁の公式資料に沿って独自に編集した記事です。資産形成ナビはリベ大・リベシティ・両学長の公式サイトではない個人運営メディアです。税負担や住宅ローン控除の適用を保証するものではないため、個別の契約前に税理士等の専門家にご相談ください。