相場が大きく下がったとき、何を優先するべきか

株価が突然大きく下がると、保有資産の評価額が減ることに不安を感じる人は少なくありません。反対に「買い場が来た」と焦って資金を使い切ってしまうこともあります。

2024年8月3日の高配当株マガジン第50回は、7月末の日本銀行の利上げ、急速な円高、日本株の調整を背景に、これから高配当株のポートフォリオを作る場合の考え方を紹介した回でした。モデルへの追加候補として医療・介護用ベッドを扱うパラマウントベッドホールディングスが挙げられ、既存の構成銘柄を除外せず、業種配分を調整する方針が示されています。

この回で強く印象に残るのは、株価の急落そのものよりも、企業の業績と家計管理を重視するという視点です。投資家が日々の株価を正確に予測するのは難しくても、生活費や貯蓄を管理することは自分の行動で改善できます。

この記事では会員向け原文や図表をそのまま転載せず、当時の相場環境、追加銘柄の意味、金利と為替のリスク、初心者が実践できる確認手順を独自の文章で再構成します。資産形成ナビは会員向け投稿の運営元とは別の、独立した非公式メディアです。

※この記事は過去の投資環境を振り返る教材です。相場数値は主に2024年7月31日時点、資料の投稿日は2024年8月3日、一次資料の確認日は2026年10月19日です。2024年8月5日の歴史的な株価下落については、投稿日以降に起きた事象として区別して説明します。記事は個別銘柄の購入を勧めるものではありません。

2024年7月末の日経平均・為替・金利を確認

2024年7月31日の日経平均株価は39,101.82円でした。前月末の39,583.08円と比較すると481.26円、約1.22%の下落です。

同日の日経平均PER(加重平均)は16.44倍、PBR(加重平均)は1.47倍でした。これらは日経平均プロフィルの公式アーカイブで当時の数字を確認できます。

指標当時の参考値根拠・補足
日経平均株価39,101.82円2024年7月31日の終値
前月末比−481.26円約1.22%の下落
日経平均PER16.44倍日経平均の加重平均
日経平均PBR1.47倍日経平均の加重平均
米ドル/円149.98円投稿に掲載された当時の参考値
高配当株指数の配当利回り3.85%投稿の参考数値。現時点の利回りではない

日経平均株価・PER・PBRは日経平均プロフィルの日次サマリーで照合しました。円相場・高配当株指数の利回りは元投稿の集計値であり、同じ条件の外部一次資料とは完全な再照合ができていないため、参考値として扱います。

株価指数の下落率と、高配当株だけのポートフォリオの運用成績は一致しません。組み入れている銘柄、保有比率、受け取った配当、購入価格が異なるからです。指数が大きく動いた日でも、すべての銘柄が同じ幅で動くわけではありません。

日銀の利上げは何を変えたのか

日本銀行は2024年7月31日の金融政策決定会合で、短期の市場金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度に誘導する方針を決めました。従来の0~0.1%程度からの変更です。また、長期国債の買い入れを段階的に減らす計画も決定しました。

金利の引き上げは、株式の価値にいくつかの経路で影響します。

まず、企業が新たに借入を行うときの資金調達コストが高くなる場合があります。将来の成長のために借入を必要とする会社や不動産関連の事業では、利益への影響が生じる可能性があります。

次に、金利が高くなると銀行預金や債券などの利回りも見直され、投資家が株式に求めるリターンが変わる場合があります。株式と債券は異なるリスクを持つ商品ですが、投資先の相対的な魅力は金利水準によって変化します。

さらに、日米の金利差が縮小するという見方が強まれば、為替相場に影響が及ぶ場合があります。ただし、為替は金利差だけで動くものではなく、経済指標や市場心理、資金の流れによっても変動します。

出典:日本銀行・2024年7月31日の金融市場調節方針

160円台から150円前後への円高が企業に及ぼす影響

2024年6月末の参考相場は1ドル160円台でしたが、7月末には150円前後へと円高が進みました。急な為替変動は、外国で売上を得る企業と、海外から原材料を仕入れる企業では影響が異なります。

たとえば海外で1億ドルの売上を上げた企業を仮定します。1ドル160円で換算すれば160億円ですが、150円なら150億円です。海外の販売数量やドル建て売上が同じでも、円換算の売上は約10億円変わる計算です。ただし実際の営業利益への影響は、現地生産、仕入れ通貨、為替予約、価格転嫁などによって異なります。

一方、海外からドル建てで原材料を仕入れる企業では、円高が仕入れ負担を軽くする可能性もあります。国内で販売する製品の価格転嫁との組み合わせによって、利益の改善につながる場合があります。

したがって「円高になったから日本株は全部売る」「円安だから日本株を買う」という判断は単純すぎます。個別企業の決算短信や有価証券報告書で、海外売上比率、輸出入構造、想定為替レートを確かめましょう。

円で売買できる株式でも、投資先企業の利益が為替に左右されれば株価は影響を受けます。国内上場株は為替変動と無関係という意味ではありません。

8月の急落を、投稿日と区別して振り返る

第50回が投稿されたのは2024年8月3日です。したがって、その2日後の8月5日に発生した株価急落を、当日の投稿で知っていたかのように扱ってはいけません。

実際には、2024年8月5日の日経平均株価は31,458.42円となり、前営業日比4,451.28円、12.40%の下落を記録しました。当時の最大下落幅を更新する歴史的な値動きでした。

この出来事を後から振り返ると、利上げ、円高、米国景気への警戒、投資家のリスク回避など、複数の要因が重なった局面だと理解できます。ただし、下落の理由を一つだけに特定することは困難です。

出典:2024年8月5日の日経平均の値動き・当時の市場報道

急落した株はすべて割安なのか

株価の下落だけでは判断できません。企業の業績や配当の持続性まで同じ程度に悪化している場合もあります。株価の下落と同時に利益見通しが下方修正されれば、PERは思ったほど低くならないこともあります。

逆に、企業の業績が比較的安定しているのに市場全体の売り圧力を受けて値下がりするケースもあります。こうした違いを見極めるため、過去のEPS、配当性向、営業キャッシュフロー、借入金の水準を確認する必要があります。

値下がり率だけを見て「底値だ」と決めつけたり、短期で元の株価に戻ると期待したりするのは危険です。買い付ける場合でも、生活防衛資金や将来使う予定のお金には手を付けないことが基本です。

モデルの変更点:パラマウントベッドHDを追加

2024年8月モデルでは、前月モデルにあった銘柄を除外せず、新たにパラマウントベッドホールディングス(証券コード7817)を追加する方針が示されました。保有比率は、業種のバランスを調整するという位置づけです。

パラマウントベッドHDは医療・介護用ベッドなどを扱う企業グループです。病院向けの製品、介護施設、在宅介護向けのサービスを通じて、人々の健康と生活を支える分野に関わっています。

高齢化という社会の長期的な傾向から、医療・介護への需要が今後も一定程度期待できる事業はあります。ただし、需要があるから利益も必ず伸びるとは限りません。病院の設備更新サイクル、介護保険制度、レンタル収益の構造、物流費や材料費などが業績に影響します。

元投稿では、直近の決算が必ずしも良好ではないという留保と、中長期の投資対象としての期待が併記されていました。過去の見方と現在の経営成績を区別して扱うことが大切です。

公式確認先:パラマウントベッドHD・決算短信と説明会資料

医療・介護関連なら景気に強い?

生活に必要な商品・サービスを提供している企業は、景気変動に対して比較的安定した需要を持つ場合があります。しかし、人件費上昇や製品の価格競争、病床数や介護サービスの制度変更、設備更新の先送りなどで利益は変動します。

「医療・介護だから安全」「高齢化が進むから株価は上がる」という断定は避け、売上や利益の増減理由を調べましょう。事業の安定性と株価の安定性も必ずしも一致しません。

J-REITの役割と金利の関係

不動産投資信託であるJ-REITは、賃料収入などを主な収益源に分配金を支払う商品です。会社の株式とは異なる資産に投資できるため、ポートフォリオの分散対象として候補になります。

一方で、金利上昇はREITが利用する借入の調達コストや、投資家が求める利回りに影響します。投資口価格が下がると分配金利回りが高く見えることがありますが、その理由が事業環境の悪化にあるかもしれません。

第50回では、J-REITの組入比率を通常より高めに考える見方が示されました。ただし、それは当時の相対的な価格評価であって、誰にとっても適正な投資比率が確定しているという話ではありません。

J-REITには空室率、賃料改定、修繕費、借入金利、不動産市況など多くのリスクがあります。金利が上がるたびに買い増せばよいわけでも、安い時期には下落リスクが残っていないわけでもありません。

REITを検討するなら、投資法人の決算資料で借入期間、固定金利比率、保有物件、分配可能利益、借入の返済予定などを確認することが重要です。

株価急落時ほど家計管理を優先したい理由

第50回では、市場の変動を見るだけでなく、自分で管理できる家計の見直しにも注目していました。これは投資初心者にも実行しやすい考え方です。

株価が1日で10%下がるような相場では、不安から頻繁に画面を確認したくなるものです。しかし、価格を見続けても利益を増やしたり、企業の本業を改善したりすることはできません。

一方、固定費の契約や生活費を見直せば、毎月手元に残る金額を変える余地があります。たとえば月3,000円の不要な固定費を削減できれば、年間では36,000円です。これは確実に削減できた場合の算術であって、元本保証の投資利回りと同じという意味ではありません。

短期的な株価をコントロールしようとするより、支出、現金の確保、借入返済、収入を増やす工夫といった、行動できることに集中する方が落ち着いて投資を続けられる場合があります。

家計を圧迫して株を購入し、相場が下がったときに生活費のために売るような状況は避けたいところです。配当収入は変動するため、毎月必ず入る給料と同じようには扱えません。

暴落に備えて購入時期を分ける考え方

株式は一度に購入することも、時期を分けて購入することもできます。どちらが最終的に有利になるかは将来の株価次第です。

たとえば投資予定額が12万円あるとき、すべてを一度に購入する方法と、4万円ずつ3回に分ける方法では、価格変動にさらされる時期が変わります。購入後に株価が上がれば一括購入の方が多く上昇益を得ることもあり、購入後に下がれば分割購入が平均取得価格を抑える場合があります。

ただし、分割しても元本割れリスクがなくなるわけではありません。業績が継続的に悪化する会社を繰り返し買い増すと、損失が拡大する可能性があります。

高配当株で大切なのは「何回に分けて買ったか」より、業績と配当の持続性を検討し、資産全体が一社や一業種へ偏りすぎないようにすることです。

株価の下落を予測できた前提で投資戦略を説明することも避けたいものです。2024年8月の事例は、当時は下落の最終地点が分からなかったことを思い出させてくれます。

月次モデルで銘柄を追加するときの確認方法

月次モデルで新しい銘柄が入ったからといって、その銘柄を既存の保有株に必ず買い足す必要はありません。新しくポートフォリオを作る場合の構成と、すでに持っているポートフォリオの修正は別の作業です。

たとえば既存の保有株の35%が医薬品・医療関連なら、さらに医療関連の企業を加えると偏りが強まることがあります。保有企業が異なっても、同じ規制、同じ顧客、同じ景気要因に左右される可能性があります。

逆に、モデルから外れなかった企業をこれから購入する場合も、当時の株価から大きく上昇していれば配当利回りは下がっているかもしれません。企業の実績が良くても、購入価格が高すぎれば期待する現金収入が得られない場合があります。

過去モデルを学ぶ価値は「紹介された銘柄を覚える」ことではなく、変更の理由を自分で説明できるようになることです。

先月の変化を見るには第47回・2024年7月の月次モデルと、その前の第44回・2024年6月の月次モデルを比較すると理解が進みます。

これから高配当株を始める初心者のチェックリスト

高配当株に投資する前に、次の順番で確認することをおすすめします。

  1. 毎月の支出と、いざというときに必要な現金を把握しているか。
  2. 余裕資金で投資し、株価下落時に生活費のために売る必要がないか。
  3. 欲しい配当金の額を年単位で計算し、必要元本を無理なく想定できるか。
  4. 企業の事業内容、売上高、EPS、配当性向、営業キャッシュフローを確認したか。
  5. 同じ業種の会社に偏っておらず、為替・金利への感応度も分散できているか。
  6. 株価と配当利回りの時点をそろえ、購入価格の妥当性を考えたか。
  7. 減配や株価下落が起きても、投資を続けられる損失許容額に収まっているか。
  8. 新しいモデルを毎月そのまま買い続けるのではなく、既存の保有割合を見直しているか。

勉強しても投資を始めるべき時期が分からないなら、注文せずに企業の決算を一社ずつ読んでみる方法もあります。急ぐ必要はありません。

高配当株の仕組みや元本の計算から学びたい場合は、高配当株投資の初心者向け基本ガイドも参照してください。

よくある質問

Q.2024年8月の急落は日銀の利上げだけが原因ですか?

日銀の政策変更は重要な要因の一つですが、米国の景気減速への警戒、為替の急変、投資家の持ち高調整など、さまざまな要因が重なったと考えられます。単一の原因だけで相場全体を説明することはできません。

Q.モデルにパラマウントベッドHDが追加されたので今も買えますか?

2024年8月当時の組み入れ理由と、2026年現在の投資判断は別です。最新の上場状況、株価、決算、配当方針を確認してください。過去の記事は現在の購入推奨ではありません。

Q.株価が急落しているなら全資金で購入した方がよい?

急落の最終地点は分かりません。今後さらに株価が下がる可能性もあり、業績や配当が悪化する場合もあります。生活防衛資金を確保し、リスク許容額を守ることが重要です。

Q.円建ての日本株だけなら為替リスクはありませんか?

円で取引する株式でも、企業の海外売上・原材料輸入・海外子会社などを通じて為替変動が利益に影響します。円建て資産というだけで為替の影響を受けなくなるわけではありません。

Q.J-REITは株式より安全ですか?

異なる収益源を持つ資産ですが、金利、不動産市況、借入、賃料、保有物件の価値などによる価格下落や減配・分配金減額の可能性があります。株式と同様に元本保証はありません。

Q.下落相場で日々の株価を見ない方がいい?

感情的な売買を避けるため、頻繁に確認しすぎないことが役立つ人もいます。ただし、企業の決算や配当方針に重大な変化があれば確認する必要があります。情報を無視するのではなく、見るべき項目を決めておくことが大切です。

まとめ:相場が荒れるときほど「自分で管理できること」に集中する

2024年8月モデルは、日銀の金融政策変更、円高、株価急落という不安定な環境で高配当株をどう考えるか、という問いに向き合った事例です。

月次モデルにはパラマウントベッドHDが追加されましたが、重要なのは銘柄名だけではありません。医療・介護関連の事業が収益にどうつながるか、既存ポートフォリオの業種構成にどう影響するか、取得価格が合理的かを考える必要があります。

また、過去の利上げや暴落を振り返ると、短期相場の予測は難しい一方で、家計を整える、現金余力を確保する、企業の財務を確認する、業種を分けるといった行動は自分で管理できることが分かります。

2024年の相場をそのまま2026年の投資に当てはめず、過去の事例から判断力を磨くことに活用していきましょう。

※本記事は独立した非公式メディアによる情報提供・投資教育目的の解説です。原文の転載ではなく独自に編集しています。特定の金融商品・企業の売買を勧誘せず、将来の配当・分配金・リターンを保証しません。株式・REITには価格下落、元本割れ、減配・無配のリスクがあり、投資判断は最新の企業IRや公的資料を確認したうえでご自身の責任で行ってください。

参考資料と確認日

記事資料の確認日:2026年10月19日。相場の数値は歴史的な参考値であり、最新価格ではありません。