2024年7月のモデルから学べること

高配当株の運用で難しいのは、利回りが高い銘柄を見つけることだけではありません。株価が上がれば利回りは低下し、円安や金利の変化で同じ企業の評価が変わることもあります。ある月に候補だった銘柄が、翌月の新規購入候補から外れるのは、その企業が突然悪くなったからとは限りません。

2024年7月2日の高配当株マガジン第47回では、当時の日本株・米国株の相場を踏まえ、日本の高配当株を新規に組み合わせる場合の考え方が紹介されました。先月のモデルからはアイチコーポレーションを除外し、システナを追加する方針が示されています。

この記事では、この回の内容を独自の文章で再構成し、当時の株価指標、金利、為替、業種分散を初心者にも分かるよう解説します。会員向け投稿の本文や画像を転載したものではありません。

結論として、2024年7月モデルから学べるのは、「企業の質」と「今の購入価格」を分けて考え、ポートフォリオ全体の安定性を優先する姿勢です。これは現在の買い推奨リストではなく、過去の相場を題材とした学習記事です。

※情報の基準日:相場数値は主に2024年6月28日、投稿内容は2024年7月2日、制作時の一次資料確認日は2026年10月19日です。2026年現在の株価、配当予想、企業評価を表していません。株式には元本割れ、株価下落、減配・無配のリスクがあります。

2024年6月末の株式市場を数字で振り返る

2024年6月28日の日経平均株価は39,583.08円でした。前月末の38,487.90円から1,095.18円、約2.85%上昇しています。日経平均PERは加重平均16.74倍、PBRは加重平均1.50倍で、いずれも日経平均の公式過去データと照合できます。

指標2024年6月末の数字確認・読み方
日経平均株価39,583.08円2024年6月28日終値
前月末比+1,095.18円約2.85%の上昇
日経平均PER16.74倍日経の加重平均値
日経平均PBR1.50倍日経の加重平均値
米ドル/円160.83円投稿に記載された当時の参考値
日経高配当株50の配当利回り3.85%投稿に記載された参考値。算出時点と定義に注意

日経平均の終値とPER・PBRについては、日経平均プロフィルの2024年6月28日の日次サマリーを参照しました。為替と高配当株指数利回りは投稿当時の参考数値であり、現時点で同一条件の外部一次データとの再照合までは完了していません。したがって今の評価額の根拠には使用しないでください。

株式市場が上昇していると、「まだ上がるのでは」と急いで購入したくなることがあります。しかし市場全体が上昇していても、金融、食品、情報通信、輸送用機器、不動産など、個別の業種・企業の株価は異なります。市場の強さだけでは、どの会社をいくらで買うのが適切か分かりません。

日経平均と高配当株指数を比べるときの落とし穴

日経平均は225銘柄から構成される株価平均型の株価指数です。一方、高配当株指数は配当利回りなどの条件で選ばれた企業群です。両者は構成銘柄も、算出の仕組みも異なります。

高配当株指数の騰落率が日経平均より低い、または高いというだけで、すべての高配当株投資家の成績を推測することはできません。実際の投資成果は、購入日、売買手数料、受け取った配当、保有する銘柄や比率によって変わります。

投稿では日本の高配当株指数が6月に小幅なマイナス、米国高配当株指数も弱含みと紹介されました。この評価は、日経平均そのものが前月比で上がった事実と矛盾しません。見ている指数が違うからです。

配当利回りの高い企業が減少した理由

当時の投稿では、配当利回り3.75%以上という条件に該当する企業を約506社とし、前月より56社減ったという参考集計が示されました。市場区分別にはプライム269社、スタンダード226社、グロース11社です。

この集計は対象銘柄や計算方法によって変わるもので、取引所が公表する統一的な公式統計とは限りません。数字自体より重要なのは、なぜ高利回り候補の数が変わるかという仕組みです。

配当利回りは原則として「年間1株配当金÷株価×100」で計算します。年間配当が100円で株価が2,500円なら利回りは4%です。その株価が3,000円に上がり、配当が100円のままなら利回りは約3.33%に下がります。

つまり、好業績で株価が上がった企業ほど、「高配当」というフィルターから外れる可能性もあります。配当利回りが基準を下回ったからといって、急に事業の競争力が弱まったと結論づけられません。

反対に株価が下がったことで利回りが5%になった企業には、今後の減配を市場が警戒している場合もあります。高い利回りは調査のきっかけであり、企業の安全性そのものではありません。

2024年7月に注目された円安と景況感

投稿時点のドル円は1ドル160円台で、円安が大きな話題でした。海外で稼ぐ日本企業は、外貨建ての利益を円に換算すると利益額が増えることがあります。一方、エネルギーや原材料を海外から調達する企業では、仕入れコストが上がる可能性があります。

したがって「円安は日本株全体に良い」とは言い切れません。顧客と仕入れ先がどこにあるか、販売価格を引き上げられるか、為替予約などで影響を抑えているかによって利益への影響は変わります。

日本銀行が2024年7月1日に発表した2024年6月短観では、大企業製造業の業況判断DIが前回の+11から+13に改善しました。一方、大企業非製造業は+34から+33へ小幅に悪化し、すべての企業に同じ追い風が吹いていたわけではありません。

短観の全規模・全産業による2024年度の想定為替レートは1ドル144.77円でした。当時の市場で見られた160円台とは相当の差があり、為替が企業の業績予想を左右する可能性を考える材料になります。

出典:日本銀行・短観(要旨)2024年6月

米国の金利とハイテク株も背景にあった

この時期の米国市場では、半導体やAI関連のハイテク企業への注目が高まる一方、インフレと政策金利の高止まりが意識されていました。債券利回りが相対的に高ければ、同じ程度の配当利回りしかない株式を選ぶ投資家には、価格変動リスクの対価が十分かという疑問が生じます。

もっとも、株式の配当と債券の利息は同じ商品ではありません。株式には利益成長や増配の可能性がある一方、配当の削減と株価下落の可能性があります。債券も金利変動によって市場価格が変動します。単純に表面利回りだけを比較して優劣を決めないことが重要です。

モデルの入れ替え:システナを追加、アイチコーポレーションを除外

今回のモデルで取り上げられた変更は、前月から一社を追加し、一社を外すというものでした。

変更銘柄投稿時の説明から読み取れること
追加システナ(2317)ITシステム開発・運用などの企業を組み入れ、業種分散を検討
除外アイチコーポレーション(6345)株価上昇によって新規購入時の配当利回りが低下した点を重視

2024年7月2日の投稿では、アイチコーポレーションは数か月の株価上昇で利回りが約3.15%になったことが、新しく組むモデルから外した理由として説明されています。

ここで誤解したくないのは、「新規モデルへの採用見送り」と「すでに保有している人が売るべき」は違うということです。保有者なら購入時の価格、取得利回り、現在の業績、将来の増配可能性、売却後の投資先まで考える必要があります。

システナについては、複数年の増配実績に注目したという内容でした。ただし、過去の増配回数やIT需要の成長は、将来の増配を保証するものではありません。労務費、受注単価、特定顧客への依存、エンジニアの採用難、配当性向の推移なども確認が必要です。

2026年現在、両社の株価や配当予想、経営環境は変化している可能性があります。当時の採否を現在の購入判断として使わないでください。

企業の質と購入価格を区別する

モデルに入れる会社を選ぶ際には、最低限、「事業が長く稼げるか」「配当を支払う現金があるか」「株価が収益力に対して高すぎないか」を区別します。

たとえば、毎期EPS(1株当たり利益)が増加し、営業キャッシュフローも黒字で、財務基盤が比較的安定した企業があったとします。その企業でも人気が集まって株価が大きく上がれば、投資元本に対して受け取れる配当金の割合は低くなります。

逆に、高い配当利回りを維持する企業でも、一時的に過大な配当をしているだけなら長期保有には不向きな場合があります。配当性向、利益率、財務内容、過去の景気後退期に何が起きたかを調べる必要があります。

買い時の判断を一つの倍率で機械的に決めることはできません。PERは予想利益が変われば変動し、PBRは資本構成の違いによって企業間の単純比較が難しい指標です。配当利回りと併せて複数の角度から考えましょう。

J-REITの組入比率はなぜ話題になったのか

当時のモデルでは、国内の不動産投資信託であるJ-REITにも注目が集まりました。一般の事業会社とは異なる収益源を持つため、株式中心のポートフォリオに組み込んで資産の種類を広げるという発想があります。

しかし、J-REITの市場価格は金利や不動産市場の影響を受けます。金利が上昇すると、借入金利の負担増や他の利回り商品との比較から、投資口価格が下がりやすくなることがあります。

2024年6月末の東証REIT指数(配当なし)は1,724.02ポイント、前月比0.98%の下落でした。JAPAN-REIT.COMの月次資料によれば、市場全体の予想分配金利回りは時価総額加重平均で4.69%でした。

J-REIT市場の参考指標2024年6月末
東証REIT指数(配当なし)1,724.02
前月末比−0.98%
市場全体の平均分配金利回り(時価総額加重)4.69%

出典:J-REIT市況月次レポート・2024年6月

投稿では、通常時のJ-REIT比率を1割程度と考えつつ、当時は相対的な割安感から比率を高める考え方も示されていました。ただし、特定の比率が誰にとっても安全なわけではありません。日本の不動産への投資をすでに多く保有する人が追加すれば、実際には集中投資になることもあります。

J-REITは分配金が維持されるとも、今後の値上がり益が得られるとも保証されません。不動産の賃貸需要、修繕費、保有物件の質、借入状況などを個別に確認する必要があります。

月次モデルは、毎月そのまま買い足すための表ではない

毎月のモデルポートフォリオを見ると、前月から何が変わったかに関心が集まりがちです。しかし「今から新規に組み立てる場合」と「以前から持っている資産に買い増す場合」は別です。

新規モデルには、その時点の利回りや割安感、業種バランスを考えて選んだ銘柄が並びます。一方、長く保有する投資家は、すでに同じ会社や関連する業種に大きな割合を投じている可能性があります。

たとえば保有株式がすでにIT関連40%である場合、モデルの新規採用銘柄がIT企業だからといって単純に同じ比率を追加すると、業種の偏りが強まります。逆に、候補から外れた会社を長期で持っていても、購入時の条件が維持されているなら直ちに売却する理由にはなりません。

最も大事なのは、保有銘柄の名前だけではなく、業種、地域、景気変動との連動性、配当の継続性、手元資金とのバランスです。

2024年6月モデルの解説と比較すると、食品・物流への分散を重視した前月から、IT関連の採用と利回り低下銘柄の見送りへと、どのように考え方が変わったか分かります。

初心者がこの回を自分の投資に応用する7ステップ

  1. 生活防衛資金と、数年以内に使う現金を投資資金から分けます。株価下落時に生活費のために売却しないですむ準備が大切です。
  2. 欲しい年間配当金を決め、必要な投資額を仮の利回りで試算します。税引前と税引後を区別します。
  3. 高利回り候補を抽出しても、利回りだけで購入を決めないようにします。
  4. IR資料で過去数年の売上、利益、EPS、配当、営業キャッシュフロー、財務を確認します。
  5. 購入価格を検討し、PER・PBR・過去の配当利回りと照合します。割安水準は保証されません。
  6. 保有する全銘柄の業種比率と、J-REITなど不動産関連への投資額を確認します。
  7. 購入後も定期的に決算と配当方針を見直し、保有理由が変化していないか確認します。

特に第47回で追加・除外された銘柄を現在も検討する場合は、必ず2026年現在の決算や配当情報へ更新してください。2024年の利回り・配当実績をそのまま注文判断へ使うべきではありません。

よくある質問

Q.過去の月次モデルを現在そのまま再現してもいいですか?

おすすめしません。2024年7月の価格と現在の価格、企業業績、配当見通しは異なります。この記事は当時の考え方を学ぶためのものです。現在の購入候補を探すなら最新の決算書と株価を基準に再評価してください。

Q.アイチコーポレーションが外れたのは、経営が悪化したからですか?

今回の投稿で説明された主な理由は、当時の株価上昇による配当利回りの低下です。企業自体の経営状態が悪化したという判断とは異なります。

Q.システナを追加した理由は、IT業界が好調だったからですか?

当時の投稿では複数年の増配実績が評価されていました。ITという業種名だけでなく、受注、利益成長、現金収支、配当性向を調べることが大切です。

Q.円安のときは国内株なら為替リスクがありませんか?

日本円で売買する国内株は、外貨建て株式を直接持つ場合の為替換算リスクとは異なりますが、企業の輸出入や海外事業を通じて為替変動の影響を受けることがあります。円建てだから株価が為替の影響を受けないわけではありません。

Q.J-REITの比率は必ず10%程度が適切ですか?

いいえ。10%は当時のモデルで紹介された考え方の一例に過ぎません。運用目的、他の不動産関連資産、損失許容度、金利動向によって適切な比率は異なります。

Q.高配当株は毎月決まった金額で買うのが正解ですか?

定期的に積み立てる方法にも購入時期を分散する特徴がありますが、個別高配当株投資では株価と事業の状態を見ながら買う方針を採る投資家もいます。どちらも将来の成績が保証されるわけではありません。手間や管理できる範囲も含めて考えましょう。

まとめ:銘柄の入れ替えに表れるのは、利回りと分散のバランス

2024年7月のモデルでは、日経平均が約3万9,600円となり、1ドル160円台という円安局面のなかで、高配当株の購入候補を検討する姿勢が示されました。

アイチコーポレーションの除外とシステナの追加から分かるのは、「良い企業かどうか」と「今から保有するのに適した条件か」は別の問題だという点です。さらに、J-REITについても金利上昇による価格変動を踏まえながら、業種だけでなく資産種類の分散を考える必要があります。

翌月・翌年の相場を正確に予測することはできません。相場の変化に合わせて考える材料を更新しながらも、生活防衛資金、事業の実態、配当の持続性、業種分散といった基本を重視することが長期の資産形成では重要です。

高配当株の用語や必要な元本計算に不安があれば、高配当株投資の始め方を初心者向けに解説した記事を先に確認してください。別の相場環境で組まれた2026年10月のモデルポートフォリオも、時間による条件の違いを理解する教材になります。

※本記事は独立した個人運営の非公式メディアによる教育目的の解説です。会員向け資料を転載したものではなく、特定銘柄の購入・保有・売却を推奨しません。市場価格、配当金、分配金、元本の安全性を保証するものではありません。必要に応じて金融庁・税務当局・企業IRなどの最新情報を確認し、最終判断はご自身の責任で行ってください。

参考資料・情報基準日

記事制作時の資料確認日:2026年10月19日。相場データの対象期間:主に2024年6月末。