2024年6月の高配当株モデルから学べること

高配当株を買うとき、最初に気になるのは「いま何%の配当利回りがあるか」ではないでしょうか。しかし高い利回りだけで銘柄を集めても、同じ景気変動に弱い業種へ集中したり、配当の継続が難しい企業を保有したりする可能性があります。

この記事では、会員向けに2024年6月4日に配信された高配当株マガジン第44回の月次モデルポートフォリオを、過去の市場環境を学ぶ教材として独自に再構成します。配信当時は日本株の企業業績や増配が注目される一方、円安と金利上昇が投資判断を難しくしていました。

結論から言えば、この回で学べるのは「上がった相場で焦って買わず、配当の持続性と業種分散を優先する」という考え方です。過去のモデルをそのまま今の株価で再現することではありません。

この記事は資産形成ナビが独立して作成した情報提供用の解説です。会員向け投稿の図版や文章をそのまま転載せず、当時の相場データを公開資料で確認し、判断材料を補っています。2024年の株価や配当利回りを2026年10月現在の数値と取り違えないでください。個別銘柄の売買を勧めるものでもありません。

当時の相場環境:円安と長期金利が重要だった

2024年5月末の日経平均株価は38,487.90円でした。前月末から82.24円、率にして約0.21%の上昇です。日経平均株価の算出元である日経の月次解説では、5月中旬に半導体関連株が堅調だった一方、月末には金利上昇が株価の重荷になったことが確認できます。

月末の参考為替は1ドル157.31円でした。輸出企業にとって円安は円換算の売上や利益の押し上げ要因になり得ますが、原材料や海外製品を輸入する企業にはコスト増として作用することがあります。

指標2024年5月末の参考値初心者が読むポイント
日経平均株価38,487.90円指数が強くても全企業が割安とは限らない
前月末比+82.24円月間の値動きが小さくても日々の変動はある
米ドル/円約157.31円海外売上と輸入コストへの影響は企業ごとに異なる
日経平均PER16.52倍(投稿内の参考指標)利益予想と株価の関係を示す
日経平均PBR1.48倍(投稿内の参考指標)株価と純資産の関係を示す
高配当株指数の配当利回り3.50%(投稿内の参考指標)算出方法・構成銘柄・時点の確認が必要

下段のPER・PBR・利回りは会員向け資料で紹介された数値です。日経平均の終値と為替は外部の当時の市況資料でも照合しました。指標によって採用指数や算出時点が異なるため、ひとつの数字だけで「日本株全体は安い」と判断することはできません。

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を終了し、短期金利を主たる政策手段とする枠組みに移行しました。その後の金利上昇を市場が意識したことは、2024年5月末の株式市場やJ-REITの値動きを考える重要な背景です。

過去の相場を振り返るときは、後から分かった結果を当時の投資家が知っていたかのように扱わないことも大切です。2024年6月の段階で、その後の為替・金利・株価がどの方向に進むかを確実に予測できたわけではありません。

参考:日経平均プロフィル・2024年5月の指数解説、日本銀行・2024年3月の金融政策見直し

高配当候補が多いからといって、すべてを買う必要はない

第44回では、配当利回り3.75%以上という条件に該当する企業が562社という参考集計が示されていました。この数字は当時の独自集計であり、現在の該当企業数や統一的な市場公式統計ではありません。

高利回り企業の数が増える理由は一つではありません。増配によって利回りが上がることもあれば、株価が下がったために見かけの利回りだけが高くなることもあります。前者と後者では、同じ4%台でも受け止め方が変わります。

そこで、候補を絞るときには少なくとも次の観点を確認したいところです。

  • 過去数年の売上高と営業利益が大きく悪化していないか
  • 1株当たり利益(EPS)の増加と配当額の増加が釣り合っているか
  • 配当性向が極端に高い状態になっていないか
  • 営業キャッシュフローが本業の利益を支えているか
  • 財務が借入に過度に依存していないか
  • 既存の保有株と業種や景気要因が重なりすぎないか

利回りが高い企業を一覧にすることと、持続的に配当を出せる企業を選ぶことは別の作業です。企業のIR情報を照合し、自分で理解できる事業に投資することが大切です。

月次モデルの変更:追加2社・除外1社の意味

この回のモデルでは、前月の構成からMS-Japanが外れ、日東富士製粉とセンコーグループホールディングスが追加されました。また、業種ごとのバランスを整えるために投資割合が調整されています。

モデル内での扱い企業名当時の判断から学べること
追加日東富士製粉食品関連の収益構造を組み入れ、業種を分けるという発想
追加センコーグループホールディングス物流・陸運関連の事業を含めて分散を考える発想
除外MS-Japan利回り確保だけのための採用を常態化させないという考え方

これは2024年6月のモデルでの取り扱いであり、2026年現在の企業評価や株価について結論を出すものではありません。また、モデルに組み入れるかどうかは、その企業が良い会社か悪い会社かという評価と同義ではありません。

たとえば同じ会社でも、株価が上がって配当利回りが低下すれば、当初想定したインカム収入の目標に合わなくなる場合があります。一方、利回りが高いからといって、財務リスクが大きい会社を組み入れる必要もありません。

一社だけに着目すると選定理由が見えにくいことがあります。候補の追加・除外を理解するには、ポートフォリオ全体の業種・利回り・景気感応度との関係を考える必要があります。

食品と物流を組み入れる際のチェックポイント

食品関連事業は、生活に必要な商品を扱うため景気の影響が比較的小さい面があるといわれます。しかし、小麦などの原材料価格、物流費、人件費、取引先との価格交渉の影響を受けます。食品という業種名だけを理由に安定配当を保証できるわけではありません。

日東富士製粉を検討する場合、製粉事業の利益率、外食・食品事業の比率、原材料の調達条件、キャッシュフロー、設備投資を確認したいところです。企業による事業再編や会計期間の変更にも注意が必要です。

物流関連では、物量、運賃改定、人員確保、燃料費、設備投資、倉庫の稼働率といった要素が利益に影響します。センコーグループホールディングスのように事業範囲が広い企業では、単純な「トラック輸送」のイメージだけでなく、持株会社の事業構成を見る必要があります。

どちらも一見ディフェンシブと捉えられる部分はありますが、収益が景気や原材料価格と無関係という意味ではありません。

金利上昇局面でJ-REITをどう考えるか

この回では、金利上昇によってJ-REITの市場価格が下がる一方、株式とは異なる不動産収益に投資できる資産として、組入比率が検討されていました。

2024年5月末の東証REIT指数(配当なし)は、前月比約3.74%下落しました。同月は国内長期金利が上昇しており、REITの価格が金利環境に影響される事例として参考になります。

J-REITは複数の不動産からの賃料などを主な原資に分配金を支払う商品ですが、分配金が保証されるわけではありません。借入金利の上昇、建物の修繕費、テナント退去や不動産価格の変化が財務に影響します。

また、J-REITの比率を大きくすると、国内不動産市場や金利上昇に対して全体の投資成績が影響を受けやすくなる可能性があります。利回りが相対的に高く見えても、株価・基準価額の下落を含めたトータルリターンで評価する必要があります。

参考:J-REIT市況月次レポート・2024年5月

「いま安いかもしれない」と「将来値上がりする」は別

相場全体で買いにくいと感じるとき、無理に目標利回りを追いかけると条件の悪い銘柄を買ってしまうことがあります。一方、見送るだけでは配当資産をいつまでも作れない場合もあります。

ここで大切なのは、購入条件を先に決めることです。たとえば、配当実績と利益成長を確認する、業種の偏りを確認する、株価が過去のPER・PBRと比べて過度に高くないかを考える、といった基準が考えられます。

ただし、PER・PBR・過去配当利回りのどれにも「この水準なら絶対に安い」という万能な基準はありません。好業績が長く続くか、事業環境が変わらないか、金利・為替がどう動くかで企業価値の見方は変わります。

買う候補が少ないときは、現金を一時的に多めに持ち、次に買う企業の決算を調べる時間に充てる選択もあります。現金を保有すれば株式に投資した場合の上昇を取り逃す可能性もありますが、購入を急がないことに独自の価値があると考える人もいるでしょう。

実際のポートフォリオ設計に置き換える

ここまでの資料を実践に結びつけるなら、まず保有金額ではなく、業種ごとの比率を計算できることが重要です。

たとえばすでに日本株を20万円持っていて、そのうち食品関連が8万円なら、食品関連の比率は40%です。追加候補がどれだけ高配当でも、さらに食品関連を買えば一つの景気要因や原材料価格への依存が強まるかもしれません。

また、配当利回り4%の銘柄を2万円買っても、年間の税引前配当は概算800円です。目標配当が年間12万円なら、税金を考えない単純計算でも4%で約300万円が必要になります。小さな金額で練習する段階と、長期的に必要な資産額は分けて考えましょう。

※これは投資比率・配当の計算方法を説明するための仮定例です。2024年6月の元資料の銘柄別配分を再現した表ではありません。

2026年10月に検討されていた分散例は38銘柄の月次モデルポートフォリオ記事で解説しています。年代が異なる2つのモデルを比べると、相場環境によって銘柄や業種の比率をどう考え直すかを学べます。

NISAを使う場合の注意点

NISAの成長投資枠では、対象となる国内上場株式やETFなどの値上がり益と配当が一定の条件で非課税となります。制度によって元本割れリスクや減配リスクが消えるわけではありません。

また、国内上場株式の配当をNISAで非課税にするには、原則として「株式数比例配分方式」という受取方法の設定が必要です。金融機関口座へ直接振り込まれる方式など、受取方法によって課税されることがあります。

NISAは投資枠にも上限があるため、高配当株と投資信託をどちらも保有する場合、長期的な資産形成と今の配当収入のバランスを考える必要があります。制度を理解していない段階で、特定のモデルをそのまま買う必要はありません。

初めて配当を学ぶ方は高配当株投資の始め方も参照してください。

よくある質問

Q.2024年6月のモデルを今そのまま買ってもいい?

当時の株価・配当予想・企業の業績を前提にした過去の学習事例です。2026年現在の市場では条件が大きく異なり得ます。最新の株価と決算情報、配当方針を確認し、自分の資産状況に合うか考える必要があります。

Q.円安なら高配当株にとって良いことばかり?

いいえ。海外で稼いだ利益を円換算したときに増えやすい企業もありますが、輸入する原材料の価格が上がる企業には負担になります。企業ごとの海外売上、仕入れ、為替予約、価格転嫁の力を確認すべきです。

Q.J-REITが値下がりしたら買い時?

値下がりで分配金利回りが高く見えることはありますが、金利・不動産価格・修繕費などのリスクが高まっている可能性があります。過去の価格水準だけで決めず、資産全体のREIT比率も点検します。

Q.月次モデルで「除外」とされた企業は売るべき?

そうとは限りません。新規に組むモデルから外す判断と、すでに保有する投資家が売却する判断は異なります。購入価格、保有目的、最新の業績と配当方針、税務コストも含めて考えましょう。

Q.配当金が安定している企業だけならリスクは小さい?

分散によって個別企業の影響を抑える狙いはありますが、日本株全体の下落や景気後退で複数企業が減益になることもあります。過去の無減配実績も将来を保証しません。

まとめ:古いモデルは今の推奨銘柄リストではなく、判断の練習材料

2024年6月の市場では、企業の増配が注目される一方、円安と長期金利の上昇が投資判断に影響していました。モデルへの日東富士製粉とセンコーグループホールディングスの追加、MS-Japanの除外からは、利回りだけでなく業種の組み合わせも考える姿勢を学べます。

当時の条件と現在の条件を混同せず、利益と配当の持続性、業種分散、買い付け時点の価格を確認することが、長く続けるための土台です。

※本記事は投資教育のための非公式・独立した解説です。特定の銘柄や投資比率への追随を勧めるものではありません。株価下落、元本割れ、減配・無配、不動産・金利・為替のリスクがあり、配当利回り・市場データは基準日が異なれば変化します。投資判断は最新のIRや制度資料を確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。

出典と基準日

2024年5月末〜6月初旬の相場を振り返る歴史的な解説です。公開用情報の確認日:2026年10月19日。