結論:増やす方法だけでなく「誰が、いつ、使えるか」を先に考える

知的障害のある子の将来に備えて、本人名義のこどもNISAで資産を増やしたい。親が亡くなった後は兄や姉にお金の管理を頼みたい。こうした相談では、運用利回りより先に親がいなくなったとき、どの口座の資金を、どの権限で、何のために使うのかを整理することが大切です。

2026年10月時点では、新しい「こどもNISA」は2027年1月から利用できる予定の制度です。金融庁は0〜17歳に対象を拡大する案内を公表しています。ただし、口座の名義は子ども本人であり、親が貯めたお金を兄弟姉妹が無条件に自由に引き出せる権利が生まれるわけではありません。未成年期の管理と、成年後の財産管理は分けて考えます。

障害の程度や本人の意思を確認しながら、本人名義の資産、親が保有する資産、障害者扶養共済、特定障害者扶養信託、障害基礎年金、成年後見制度などを組み合わせる選択肢があります。すべての家庭に一つの正解はありません。 税制だけを優先して資産の名義を決めると、必要なときに本人の生活費を支払う仕組みが不十分になる可能性があります。

こどもNISAの仕組みと利用時期

金融庁の公式情報によると、2027年1月からNISAのつみたて投資枠の年齢要件が撤廃され、0〜17歳でもNISA口座を開設できるようになります。成人向けと比べ、年間投資枠と生涯の非課税保有限度額、払出しの条件に違いがあります。

項目こどもNISA(2027年開始予定)
対象年齢0〜17歳
年間投資枠60万円
非課税保有限度額600万円
投資対象つみたて投資枠の対象となる一定の商品
払出し年齢や本人同意、資金の使途など一定の条件がある
成人後原則、成人向けのNISA制度へ移行

これらは2026年10月時点の金融庁公表資料を踏まえた制度概要です。実際の申込時期、金融機関が対応する商品、細かな手続きなどは各社の最新案内を確認してください。0歳から利用できるということと、誰でも無条件に資金を払い出せるということは違います。

また、非課税で運用できるからといって元本が保証されるわけではありません。将来の施設費や生活費として使う予定があるなら、株価が下落した時でも支払いを続けられるだけの預貯金などが必要です。口座の使いやすさだけでなく、資産全体の値動きも見ます。

本人名義にしたお金の管理権限はどうなる?

未成年期には親権者などによる法的な管理が行われますが、成年後は本人の財産です。本人の判断能力が十分ではない場合でも、「兄姉だから」「親から頼まれたから」という事情だけで、家族が本人名義の証券口座を自由に売買・出金できるとは限りません。

銀行や証券会社は、利用者の本人確認や意思確認、成年後見人等の確認に関する手続きを求めることがあります。本人に代わって契約や財産管理を行う場合、成年後見制度などの法的な仕組みが必要になることがありますが、具体的には本人の判断能力や支援の必要性によって異なります。

つまり「こどもNISAで積み立てている間は便利」でも、子どもが成人してからの資産の利用方法が決まっていなければ、将来の資金計画が止まるおそれがあります。口座を作る前に、金融機関へ成年後の取扱いと代理権限の確認方法を尋ねておきましょう。

兄弟姉妹へ「お金の管理を頼む」のは十分?

家族で話し合い、兄や姉が将来の支払いを手伝うことを了解していても、その約束だけでは金融機関に対する法的な代理権限になりません。また、兄弟姉妹自身にも仕事や家庭があり、長期にわたる事務負担を当然のように任せることはできません。

兄弟姉妹が関わる場合は、誰が生活費の支払いを確認するか、支出記録をどこに残すか、判断に迷うときに誰へ相談するか、本人の希望をどのように尊重するかを相談します。本人の意思を確認できる場面では、本人の意思を最優先にしましょう。

本人が成年になった後の支援は、成年後見、保佐、補助など、必要な支援の程度に応じて異なります。家族が希望すれば必ず後見人に選ばれるという制度でもありません。最終的には家庭裁判所の手続きと判断が関わります。

親が持つNISAを活用する場合の注意点

親名義のNISAに余裕がある場合、親自身が家計に必要なお金と将来の支援資金を区別して運用する方法が考えられます。ただし、親のNISAで増やしたお金が、親の死亡後にそのまま子どものNISAへ移るわけではありません。

親の名義で資産を保有する場合には、相続、遺言、遺留分、税金、未成年者への管理などの問題が関わります。親自身の老後資金も必要であり、子どものためという理由で生活防衛資金まで市場リスクにさらすことは避けたいところです。

親名義なら成年後の本人の判断能力の問題をすべて解決できる、という説明も適切ではありません。誰にどの財産を残すか、誰が実際に生活費を支払うか、財産の移転時にどんな税金や手続きが生じるかを設計する必要があります。

障害者扶養共済制度を比較する

厚生労働省は、障害者扶養共済制度(しょうがい共済)を、障害のある方を扶養する保護者が掛金を納め、保護者が亡くなったり重度障害になったりした場合に、本人へ一定の年金を支給する制度と説明しています。

この制度は、本人に長期間の生活費が必要な場合に比較候補となります。ただし、加入する保護者の年齢や健康状態などの要件があり、掛金や支給額は制度の規定に従います。親の年齢や加入時期、都道府県等の取扱いを確認し、保険料を払えるか、必要な保障が得られるかを検討しましょう。

「親が積立投資して遺す」方法と違い、扶養共済は所定の給付を継続して受け取る仕組みです。どちらか一方にすべてを任せるのではなく、日常生活の定期支出をどう賄うか、まとまった出費をどう備えるかを分けて考えます。

特定障害者扶養信託の非課税制度

国税庁は、一定の特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権について、特別障害者に該当する特定障害者は6,000万円まで、その他の対象となる特定障害者は3,000万円まで、要件を満たせば贈与税が非課税となる制度を案内しています。

これは「障害者手帳があれば現金6,000万円を自由に非課税贈与できる」という意味ではありません。対象者の条件、信託財産、所定の契約、信託会社などを通じた障害者非課税信託申告書の提出など、手続きが必要です。

信託は、資産を託す相手・受益者・支給方法を制度に沿って定め、生活費を定期的に渡す仕組みを作れる場合があります。サービス提供金融機関によって取扱いと手数料が異なるため、金額の大きさだけで選ばず、将来必要な支出に合っているか確認してください。

家族信託との違い

一般に家族信託と呼ばれる仕組みは、信託契約により誰が資産を管理するか、誰の利益のために使うかを設計するものです。しかし、特定障害者扶養信託の税制優遇と同じではありません。また、親のNISA口座を信託財産としてそのまま引き継げると断定することもできません。

相続や障害のある人の財産管理に詳しい司法書士・弁護士・税理士など、役割に応じた専門家に、契約が本当に本人の生活費確保につながるか確認する必要があります。複雑な契約をつくるほど費用が増える場合もあるため、作成費用だけでなく長期間の運営費も見積もりましょう。

障害基礎年金は将来の収入を考えるうえで重要

日本年金機構によれば、20歳前に初診日がある障害について、障害等級などの要件を満たせば障害基礎年金の対象となる場合があります。先天性の障害を含め、一定の条件で請求できますが、障害者手帳の等級だけで障害年金の支給が自動的に決まるわけではありません。

とくに20歳前傷病による障害基礎年金には所得による支給制限がある点も重要です。本人の収入状況や他の給付との関係で受給に影響する場合があります。最新の基準と相談先は日本年金機構の公式情報を確認してください。

施設の費用や住居費などを見込むときは、障害基礎年金を必ず一定額受け取れると決めつけず、受給要件の確認や更新、収入制限の可能性も踏まえます。必要に応じて市区町村の障害福祉窓口や相談支援専門員にも、生活上の支援制度を聞いてみましょう。

将来の生活費をシミュレーションする

仮に、成人後の生活費と支援関連費用が月18万円で、公的な給付や本人の収入が月12万円だとすると、月6万円が不足します。年間の不足額は72万円、10年で720万円です。これは制度上の給付額ではなく、計算方法を示す架空の例です。

設計する項目確認内容
住まい家族と同居、グループホーム、施設など
毎月の生活費食費、住居費、医療費、日用品
支援費用交通費、福祉サービスの自己負担、各種手数料
将来の収入障害年金、就労収入、その他の給付
運用・信託使う時期、元本変動、管理権限、手数料
相談・管理支援者、専門家、連絡先、記録の保管

費用は居住地や障害福祉サービスの利用状況により異なります。公的制度により自己負担が軽減される場合もあるため、サービスを受ける自治体での実額を確認してください。重要なのは一度作った計算表を固定せず、本人の成長や生活状況に応じて更新することです。

成年後見制度は何のための制度?

成年後見制度は、判断能力が不十分な方の権利と財産を保護するための法的な仕組みです。預貯金や証券口座の取扱いなどが関係する場合がありますが、どの類型が適切か、どこまで代理権限があるかは個別の判断によります。

家族が成年後見人になればすべて自由に運用できるわけではありません。本人の利益を守る義務や、家庭裁判所への報告などの管理が関係する場合があります。専門職が選任される場合は報酬の支払いが必要になることもあります。

制度の利用が必要か、本人の意思決定支援をどのように行うかは、法テラスや家庭裁判所の公開資料、成年後見制度に詳しい専門家に相談しましょう。家族の資産を効率よく投資する目的だけで成年後見制度を利用するものではありません。

兄弟姉妹の負担を小さくするための準備

親が元気なうちに、本人の希望や苦手な手続き、緊急時の連絡先、利用しているサービス、入出金の管理方法などを整理します。ただし、本人の意思やプライバシーを尊重し、医療・福祉情報を第三者に無断で共有しないことも必要です。

兄弟姉妹が将来どの役割を引き受けられるか、専門職や福祉サービスへ任せる部分はどこかを話し合います。すべての責任をひとりに負わせるより、日々の生活支援と財産管理を分ける設計も考えられます。

財産の置き方や契約については、親の死亡後に初めて相談するのでは間に合わないことがあります。遺言、信託、後見などの必要性を早い段階で専門家に相談し、家族の希望と本人の利益の両方を確認しておきましょう。

最初の30日で取り組むこと

最初の7日間は、将来の生活場所、必要な支援、親の預貯金・NISAなど資産全体の状況を書き出します。まだ未成年であれば、2027年のこどもNISAをすぐ契約する前に、親名義の資産との使い分けと本人の成年後の管理方法を検討します。

次の1〜2週間は、自治体へ障害福祉サービスの見込みと障害者扶養共済の加入要件を確認します。必要に応じて年金事務所で障害基礎年金の要件も相談します。これらの給付があるかどうかで、必要な現金や運用額は変わります。

30日以内を目安に、信託や成年後見制度を扱う専門家と面談し、家族の状況に合った手段を比較します。信託を必ず使うべきということではなく、必要な権限・費用・管理体制を明確にすることが最初の目的です。

よくある質問

知的障害のある子にこどもNISAを作るのは避けるべきですか?

一律には言えません。長期の資産形成に使える可能性がある一方、本人が成人した後の財産管理と出金方法を事前に考える必要があります。本人の利益と金融機関の取扱いを確認しましょう。

こどもNISAはすでに利用できますか?

2026年10月時点では2027年1月から開始する制度として案内されています。金融機関によっては事前申込を受け付けていますが、実際の運用開始時期と手続きは公式案内を確認してください。

兄姉が将来、本人名義の証券口座を自由に使えますか?

親族だからという理由だけでは自由に管理できません。本人の同意や適切な法的代理権限が必要な場合があります。必要に応じて成年後見制度などの相談をしてください。

特別障害者なら6,000万円が無条件に非課税になりますか?

いいえ。一定の特定障害者扶養信託契約や申告などの要件があります。通常の贈与にそのまま適用されるものではありません。

障害者手帳Aなら障害基礎年金を必ず受給できますか?

必ずしもそうではありません。障害基礎年金は独自の障害認定・請求要件があり、20歳前の傷病による場合には所得制限もあります。年金事務所などで確認してください。

参考資料(2026年10月23日確認)

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この記事は2026年10月15日の会員向けQ&Aで扱われた疑問をもとに、公的な一次資料で独自に検証したものです。資産形成ナビはリベ大・リベシティ・両学長の公式サイトではなく個人運営の非公式メディアです。障害のある人の権利を尊重し、個別の資産管理や相続・信託・税務については専門家・自治体・公的窓口に相談してください。